女性と災害研究の展開
「震災後の若年性女性のライフ・キャリア形成と知識伝達に関するジェンダー論的研究」
(中間報告)
研究代表者 天童睦子(宮城学院女子大学)
研究分担者 浅野富美枝(宮城学院女子大学)
1.宮城からの発信
震災後の東北・宮城を調査地として、若年層女性の聞き取り調査を行うとともに、東北の被災地(宮城県気仙沼市)を訪問し、地域で活躍する女性への聞き取り調査を行った(2016)。とくに震災後数年を経て、女性一人一人がもつ資源と支援のあり方、地域への思いをうかがった。
また、宮城県亘理郡亘理町、山元町の訪問・視察を行った(2016、2017)。亘理町訪問(2017)では災害研究に詳しいD. Aldrich先生(Professor, Northeastern University)、J.F. Morris先生(宮城学院女子大学)ほかが同行された。
「女性と災害」のンポジウム、ワークショップの実施については下記の通りである。
「人間の復興と女性のエンパワーメント―女子大学から立ち上がる復興の新たなかたち」
- 日 時 2016年11月
- 会 場 宮城学院女子大学 第二講義館
「人間の復興と女性のエンパワーメント Part Ⅱ―女性と移動を中心に」
- 日 時 2017年12月
- 会 場 宮城学院女子大学 礼拝堂
「女性と防災」ワークショップ「経験を紡ぐ―コミュニティ再生と女性」
- 日 時 2017年3月
- 会 場 仙台戦災復興記念館 会議室
宮城県気仙沼市 地域女性インタビュー 2016 震災から5年後の今、地域について思うこと
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気仙沼地域女性インタビューで協力いただいた方々、中央は浅野富美枝
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気仙沼の防潮堤
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リアスアーク美術館
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リアスアーク美術館で津波の被害と歴史を聞く
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D. Aldrich氏と亘理視察メンバー
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宮城県亘理町視察 亘理の海 2017
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女性と災害シンポジウム 浅野富美枝氏
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女性と災害シンポジウム 運営メンバーほか
2.福島調査:郡山市,富岡町を中心に
女性と災害を論じるうえで、福島の女性たちの現状を看過することはできない。被災の複合的要因を考慮のうえ、本研究では「女性と移動」に焦点を絞って調査を進めた。
福島調査として、郡山市を訪問し、福島の女性支援を行うNPO法人ウィメンズスペースふくしまで聞き取り調査を実施した。また、原発避難を余儀なくされた福島県富岡町の人々の状況をうかがうため、郡山市内に設置された「富岡町おだがいさまセンター」を訪問した(2017)。さらに、現地視察の必要性を重視し、2018年には福島県富岡町の社会福祉協議会の協力のもと、富岡訪問を行った。
第二に、福島、宮城から埼玉方面に移動した女性たちの存在がある。本研究では、受け入れ側の地域の状況や市民活動に焦点を当て、とくにさいたま市にある男女共同参画推進センター(With youさいたま)を拠点に、その支援に携わる地域女性への聞き取りを実施した。
調査に協力いただいた皆様に心より感謝申し上げる。
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福島調査 郡山市 おだがいさまセンター1
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福島調査 郡山市 おだがいさまセンター1
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おだがいさまFM
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福島・富岡町 社会福祉協議会前でガイガー計
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富岡町 地域女性インタビュー
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富岡の海
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富岡の朝の海
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富岡町から見た第二原発
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さいたまスーパーアリーナ
3.次世代に何をいかに伝えるか―女性のライフ・キャリア形成―
本研究では若年層女性のライフ・キャリア意識とその形成過程、とくに災害の経験や地域意識と自己の人生設計のかかわりに焦点を当てた聞き取りを行ってきた。その研究展開として、若年層女性による地域で活躍する女性へのインタビューを試みた。
お一人は、女性と防災にも詳しい宗片恵美子氏(イコールネット仙台代表理事)、もうお一人は、新任教員として被災地に赴任した小学校教諭の女性である。
異なる世代の女性から、幅広く人生の選択をうかがうことで、自らのキャリア形成をどうつくりだしていくか、次世代への知識と文化伝達の視点から今後研究を深めていく。
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宗片恵美子さん 女性と地域を語る
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宗片さんと学生たちの対話 2018
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教員Cさんと学生たちの対話 2018
4.研究成果の発信・研究会報告
「ジェンダー視点からみた広域避難と女性-避難する側と避難を受け入れる側との協働」
報告者 天童睦子・浅野富美枝(宮城学院女子大学)
(第4回震災問題研究交流会,主催 日本社会学会 震災問題情報連絡会 震災問題研究ネットワーク)
- 日時 2018年3月23日(金)
- 会場 早稲田大学戸山キャンパス 33号館
報告要旨
東日本大震災は過去の事柄ではない。本報告は長期・広域避難者の女性への聞き取り調査、および支援する側の女性調査をもとに、ジェンダー視点から、避難する側と避難を受け入れる側との協働に焦点を当て、「支援」する側とその「支援」を受け入れる避難者側の双方に、避難をめぐる諸問題の共有とエンパワーメントをもたらしていることを明らかにする。
本研究報告(中間報告)は、JSPS科研費JP16K02044(研究代表者 天童睦子)の助成による研究成果の一部である。
This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number JP16K02044.